「偶然だな」

 私はびっくりして何もいえなかった。私の顔を怪訝そうに見たあと、初美に視線を移した。初美もじっとして動かなかった。先に沈黙を破ったのは支樹だった。

「はじめまして。初美ちゃん。支樹です」
「は、はじめまして」
「君のことは琴音がいろいろと話しているよ」
「そうですか」
「支樹・・・・・・」
「何だ?」
「ここで何をしていたの?」

 いつもだったら、この時間は家にいるはずだよね。

「あぁ、人と会っていた」
「人って?」

 すると何を思いついたのか、目の奥が光り始めた。

「女性と会っていただけだ」

 だめだ。腹立たしい。じらさないできちんと言ってよ!
 そう思い、見ていると、いつもより強めのデコピンをしてきた。

「いきなり何するの!」
「大声を上げない。友達も驚いているよ。ねぇ?」
「え、えっと・・・・・・」
「困らせないで。もういい、こんな人は置いていこう」
「俺の姉貴」
「嘘・・・・・・」
「嘘をついてどうする。これをもらうために会っていた」

 鞄の中から取り出したのはDVDだった。ますます訳がわからなかった。