「お兄ちゃん、何のこと?」

 困惑していると、支樹はと笑って、兄のいる部屋へと入って行った。

「何のことだ?」
「お前、琴音にちょっかいをかけようとしていただろう」
「さあ?どうだろう」

 兄は少し怒っていて、支樹は笑みを浮かべたままだった。
 自分もいるのに、わからないままなんて、仲間外れにされた気分だった。

「どうせいつもの悪戯をしようとしていただけでしょう」

 コップにお茶を注ぎ、支樹に渡した。受け取ったと思ったが、コップと同時に手も彼に捕まった状態になってしまった。

「玄関で何をしようとしたか、教えてあげようか」

 コップと支樹を交互に見た。なんでいくつもの悪戯が思いつくのかな。

「いい、教えなくていい」

 お願いだから手を離してといわんばかりに力を入れてみる。願いに逆らうように、さらに手に力を込めてきた。 ゆっくりと近づいてきたので、思わず目を閉じると、何かをぶつけたような音がした。目を開けると、頭を押さえながら、兄を睨みつけていた。