お願いだから



立ち上がり意見を言い終わった那智は、また席についた。


すると椅子がズレてたらしく、私と手がぶつかった。


「…あ、ごめん」


と小声で謝った那智。


妙に色気を感じる、低い声。


私の心はもう、遠くへワープしていて


会議など頭に入っていなかった。




「ちょっと沙月ー!」

「へ!?」

「へ!?じゃないよー!今日の会議ずっと上の空じゃん!」

「ごめんなさい…」


しゅん…とうつむいて小さくなっていると、那智は私の背中を軽く叩いた。


「今日ご飯でも食べて帰ろっか」

「うん…!」


私の心は、また高鳴った。