花色の月


仕事は明日の朝からと決まって、部屋に戻ると久しぶりにカーテンを開けた。


「なぁなぁ、いつからなっちゃんと仲良くしてんだぁ?」


「…なんで居るんですか」


「今、小桜の間は掃除中みたいだからなぁ」


それと、あたしの部屋に座ってるのは、なんの関係があるんでしょう…

一応ベッドには座ってないからセーフにしてあげるけど。



「…そんなに何回も会った訳じゃないし……」


仲良くしてるかなんて分かんないよ。

那月さんの優しげな微笑みを思い出すと、なんだか心が暖かくなる。



「俺も、なっちゃんに会いに行くかなぁ」


「いってらっしゃい」


「なぁに言ってんだよ。花乃ちゃん居なかったら会ってくれねぇだろ?」


こないだなんか目の前で鍵かけられたんだから。

そう言ってニカッと笑っているけれど、それって…


「相当、嫌われてるのね」


「いやぁ、なっちゃんは基本的に誰にでもそうだぞ?月守旅館にだって、一回しか顔を出してねぇはずだしなぁ」


基本的に電話で注文等のやり取りはしていると、さっきおばあ様も言っていたけど…


「…そんな感じには見えなかった…」


「気に入られたんだなぁ。羨ましい」


そんなのかな?
そうだったら良いと、なんでこんなに祈るような気持ちなんだろう…





あたしを本当に好いてくれる人なんて、居るわけ無いのに…