花色の月


「会えますよ」


「ぇ…?」


「寂しがりやの桜介が、いつまでも雲隠れなんて出来ませんよ」


本当に?
仲良しじゃあないって言っていたけれど、桜ちゃんの事をよく分かっているような口振りで、あたしの不安に答えをくれた。


「帰ってきたら、心配させやがって!って蹴っ飛ばしてあげればいいんです」


「フフッ、蹴っ飛ばしたら知花さまに怒られそうです」


「あぁ、あなたはそうやって笑っていた方が可愛いですね」


そう言って微笑まれると、なんだか顔が熱くなる。お世辞だって自分に言い聞かせるけれど、それでも嬉しいなんて……あたしけっこうお馬鹿かも……



「取り合えず、奴を蹴飛ばしといて下さい」


「はい?」


「十夢ですよ。脛でも思いっきり蹴飛ばせば良いと思います」


脛……ってなんか痛そう…
でも、現実問題蹴るとしたら脛くらいしか届かないかも…



「花乃、十夢をよろしくお願いします」


呼び捨てで呼ばれただけなのに、こんなにも胸が苦しくなるなんて…

言葉が出てこなくて、小さく頷いて返事をした。