気遣わしげな那月さんの顔を見て、この人も二人の関係は知っているのだと分かる。
「…脱け殻みたいです」
「…やっぱり」
脱け殻って言葉がピッタリな気がしてそう言うと、那月さんは苦笑いしながら呟いた。
「あの……那月さんは、知花さまや桜ちゃんと親しいんですか?」
「あぁ、あの筋肉馬鹿は私の兄弟子なんです。
桜介は奴が連れてきました。まぁ、月守旅館の跡取りですから、この村で知らない人は居ないと思いますけどね」
…那月さん、知花さまに対しては口が悪いような?
「…兄弟子…ですか?」
「はい、如月窯はご存知ですか?」
「はい、うちで使ってる陶器は殆ど…」
あっ!?その窯の?
そう言えば知花さまも陶芸をしていた筈。
うちにもいくつか『十夢』って書いてある器がある。
「有りがたい事です。先代が亡くなっても引き続き使って頂けてるので」
先代の窯元の事は、おじいと呼んで可愛がってもらっていた。
ちっちゃな時には、おままごと道具一式をおじいに焼いて貰ったり、粘土遊びに行っていたけれど、弟子を取ってからは何だか近寄りがたくて行っていない。
「あっ、弟子って……」
「私と十夢ですね。
奴は兄弟子の癖に先代の死後私に全て押し付けて、世界を見に行くとか何とか言って出掛けてしまったんですよ。
その上、月守旅館の跡取りを連れ去ったという、筋金入りの馬鹿者です」
…笑顔が怖いですよ?
