花色の月


「武さんがさ、二人で食えって」


何やら胃に良さそうな物の並ぶお膳を前にしても、やっぱり食欲は沸いてこない。


「でも…武さんに怒られるのは怖いかも……」


「あの人容赦なく拳骨落とすからなぁ…」


「…流石に殴られた事はないけど」


「そうかぁ?やっぱり花乃ちゃんには甘いんだなぁ」



ぼちぼち会話はするけれど、目の前の食事はちっとも減ってくれない。

渋々、柔らかな湯気を上げるお吸い物を口にすると、何だか少し肩の力が抜けた。

知花さまはお箸を持ってはいるけれど、やけに動きが鈍い。まだ手のひらの傷が癒えないんだろう。



「知花さまは……どうするの?」


「どうするかなぁ…なんだか何もする気にならねぇんだよ」


おんなじだけれど…


「…このままじゃダメよね……」


「あぁ…」



「て言うか、あなたがガリガリになんてなったら、桜ちゃんが悲しむんじゃない?」


「なんだそりゃ、一応筋トレは欠かしてねぇんだけどなぁ?」


えぇっ!?食べてないのに筋トレはしてたの?


「……馬鹿なの?」


「筋肉馬鹿とか言われる事はあるなぁ?」



…そうでしょうね……