花色の月


「花乃ちゃん、一緒に食わねぇかぁ?
てか、せめて水分は取ってるんだよな?」


「…お願いだから放っておいてよ!なんであたしに構うのよ…」


「桜介の留守中に、花乃ちゃんに何かあったら俺がぶん殴られちまうからなぁ?
ちょっと開けてくれよ」


渋々ドアに向かったのは、なんでだったんだろう。

何回も訪れるのは知花さまだけじゃなくて、おばあ様や武さんだってそうなのに…


カチャリと鍵を外すと、待っていたかのように一気に開いた。



「あ~ぁ、そんなに痩せちまって。
抱き締めたら折れちまいそうだなぁ?」


文句を言おうと見上げて、あたしは言葉を失った。



精悍な力強い瞳は、寂しさと悔しさと…後は何だな分からないもので曇っている…


「…食べてないの?」


「バレちまったか……なんか食欲が沸かなくてなぁ……」



人の事は言えないあたしだけれど、それでも知花さまのやつれ具合は相当の物だと思う。

取り合えず招き入れようと後ろに下がると、側に置いていたのかお膳を二つ持って入ってきた。