花色の月


花……?
なんの花だ?



『十夢さん、桜介さんに何があったの?
なんか…電話でもちょっと元気が無かったよぉ?』


「…桜介が居ねぇんだ……
手紙置いて消えちまった」


『はぁ!?なにやってんの~?
なにしに行った訳?帰りが遅いと思ったら、振られた?』


急に翔に代わったようで、捲し立てる奴の言い分は最もだ。

そうなんだよなぁ、店はすっかり翔と瑠璃に任せっきりだし、文句を言われても仕方がない。


唯一の光だったが、手がかりになりそうな事は聞けなくて、怒られながら通話を切った。



「桜ちゃん…どこに……?」



すがるような花乃ちゃんの瞳を見ながら、首を横に振った。

結局手がかりは、無しって所だな。



「…桜ちゃん………」




桜介の名を呼びながら泣き崩れる姿をぼんやりと眺めていた。

俺は……

捨てられたのか…?



花なんて分かりにくいヒントを残したのは、故意になのか…ただ言ってみただけなのか…

花にまつわる思い出の場所なんて、いくつあるのか分からない。




一つ一つ回るか?