朝、桜介が腕の中にいない事に嫌な予感がした。
慌てて服を羽織ると、桜介の部屋に急ぐ。
開け放した扉の向こうには、少し物が減って代わりに机の上に置いてある封筒が、やたらと目立つ空間が広がっていた。
「…桜…介……?」
封筒の束の一番上は、紛れもなく桜介の文字で書かれた俺の名前。
引き裂くようにして開いた封筒の中には、数枚の便箋が入っていた。
読んでも、読んでも、内容が頭に入って来ない。
「知花さま……?」
「…花乃ちゃんか……」
「桜ちゃん知りませんか?
なんだかまだ姿を見せないって、おばあ様が探してるの」
この子に見せたら、この手紙の意味が分かるのか?
ぼんやりと、働かない頭を横に振った。
「…これ」
「手紙…?桜ちゃんから…」
俺よりは落ち着いて、でも急いで封を開ける、桜介によく似た花乃ちゃんを見詰めていた。
「ぇ……どういう事?…なんで……」
震えながら膝をついた花乃ちゃんの顔をみて、考え無しに手紙を渡した事を後悔した。
息が浅い。
慌てて背中をさする俺なんか居ないみたいに涙を流す瞳には、深い絶望の色が浮かんでいた。
