花色の月


『お前以外ねぇだろうが』


嘘つき。

知ってるんだよ?
十夢の心の中で、花乃の存在がゆっくりと大きくなってる事に。

そして…たぶん花乃の中でも……


ねぇ、十夢と花乃なら障害が無いって知ってる?
僕が消えたら、二人には障害が無いんだよ。




「お前こそ、何を考えている?
俺から意識反らすなんて上等だなぁ?」


この低くて甘い声が好き。


「十夢……」


「忘れるな。
忘れたくても…忘させてやらねぇよ。
お前には、俺だけだ」


そして俺も、お前以外誰もいらねぇんだよ。

と、最後の囁くような声に、体が余計に熱くなる。


荒々しく僕の手を布団に縫い止める、この逞しい腕が好きだ。

時に優しく時に熱く、僕を見詰めてくれるグレーの瞳が好きだ。


僕の手に絡まってほどけた長めの髪が、緩いウェーブを作って肩にかかる。



こんな僕でも全力で愛してくれる十夢を、僕も心から愛してる。

だから…

荒々しい波に飲まれながらも、必死に十夢にしがみついた。

決して忘れないように…















……その日、桜介が消えた。