お見合いから帰ってきた桜ちゃんは、分かりやすく不機嫌で、おばあ様は疲れたように曖昧に微笑んだ。
…上手く…いかなかったのかな?
微かな希望を胸に、桜ちゃんが階段を上がってくる音に耳を澄ませた。
「疲れたーっ!花乃癒して」
「…桜ちゃんを癒すのは、あたしの役目じゃ無いような……」
「お見合いの愚痴なんて、十夢には言えないでしょ?」
…桜ちゃんって、時に残酷だ。
それはあたしの気持ちになんて、これっぽっちも気が付いてないって事でしょ?
部屋に入ってくるなりベッドにダイブした桜ちゃんを、複雑な気持ちで見つめていた。
「…桜ちゃん、それでも一番に知花さまの所に行かなきゃダメだと思うよ」
「花乃って、十夢の事嫌いじゃなかったの?」
桜ちゃんは返事にならない返事を、驚いた顔で言った。
…そうなんだけどね……
「…あの人は何だか憎めなくて……
モモもなついてるし…」
「ふ~ん、じゃあ十夢んとこ行ってくる」
納得したのかしてないのか、桜ちゃんの表情からは読み取れない。
それでも立ち上がってスーツをパタパタ叩くと、ドアを開けながら言った。
「ごめんね、花乃。
僕、逃げてしまいたくなったんだ…」
何からとは聞けなくて、どうしてとは言えなくて、ただ桜ちゃんの姿が見えなくなっても顔を上げる事が出来なかった。
…あたしに、ここを継ぐ力量さえあったなら…
桜ちゃんの望みを叶えてあげられたのに…
