花色の月


黙って月と桜を眺めながら、どうしようもなく寂しくなった。

ちびちび飲んでいた酎ハイもいつの間にか空になっていて、それを片付けがてら部屋に帰る事にした。



「…おやすみなさい」



「Good night.
Sweet dreams.」



…その無駄に発音いい英語は、桜ちゃんと世界を見に行くにはとっても役にたったでしょうね。




部屋に帰ると、こらえていた涙がこぼれ落ちた。

あの人の前で泣いてはいけないと思ったから。

あの人の痛みが少なからず分かるからって、決して慰め合ってはいけないと思ったの。


だから、くだらない話をして気をまぎらわしていた。





それに…あの人には桜ちゃんがいる。

あたしがどんなに望んだって手に入らない桜ちゃんは、あの人の言葉で涙して、あの人に愛を囁くんだ…