「…一人になりたくなくて、巻き込んじまった」


あぁ、この人も同じ気持ちだったんだ。

今頃桜ちゃんは、おばあ様の部屋でお見合い相手の写真を見ながら、明日の段取りを聞いている筈。



「分かっててもなぁ…
今日は飲んだくれたい気分なんだよ」



そう、明日。
明日、桜ちゃんはお見合いをする。



「いっそ……」



さらってしまえば良いのに。
言えない言葉はしこりとなって、喉に詰まったみたいになった。

酎ハイを流し込んでも変わらない喉の詰まりに、息苦しくて窓の外に目をやった。



「大人って…めんどくせぇなぁ」



「あなたでも、縛られるのね」



いつでも羽ばたいて行けそうな、強い瞳をしているのに。



「縛られっぱなしだよ。
あの頃が……懐かしいなぁ…」



どの頃なのか、聞きたいのに聞きたくない。
知花さまだって、言うつもりは無いだろうし。



「なんだかんだ俺には喋んのになぁ?
なんで普段は無駄におとなしいんだぁ?」



「……」


…そんなの知らないわよ。
それに今だって、言いたい事の半分も言えてやしないもの。