大きな声で言いながら、階段を登って来たのは知花さま。
おばあ様は、桜ちゃんの恋人だって分かっているけれど、あくまで桜ちゃんのお友達として扱っている。
だから、桜ちゃんに縁談なんて持ってくるんだ。
「おっ、花乃ちゃん一人か?」
「……はい」
何人に見えます?
「じゃ、俺と花見酒と洒落こもうか」
何故かニヤリと笑いながら、ぐいとあたしの手を引いて階段を降りだした。
相変わらず強引な…
でも、一人にはなりたくない気分だったから、この際知花さまでもいいかなって、大した抵抗もせずについていくあたしは馬鹿なんだろうか…
大きな背中を見ながらついていき、直ぐに開けっぱなしになっていた小桜の間の入り口をくぐる。
「桜介と飲むつもりだったんだけどなぁ」
「すみませんね、桜ちゃんじゃなくて」
嫌な言い方をしたのに、何故か面白そうに笑う知花さまの前には、お酒と雑多なつまみが並んでいた。
「…武さんに頼めば良いのに」
「まぁな、でもあんまり煩わせたりしたくねぇからなぁ」
「…ふ~ん」
この人でも気を使ったりするのね。
