「…なんだ……」
そこに居たのは小さな子猫だった。
艶やかな毛並みは少し赤みを帯びたブロンドで、小さな体を木漏れ日が優しく照らしている。
「こんにちは……どこの猫ちゃんかな?」
そっと手を出したけれど、それ以上近づいては来なかった。
「あたしね、人を探しているの。人かもよく分からないんだけど…
ねぇ…知らないかな?長い髪の背の高い男の人…?」
だと思う…
はっきりしてるのは髪が長くて背が高かった事くらい。
知花さま程じゃないと思うけれど、取り合えず桜ちゃんよりはだいぶ高かった筈…
「あなた綺麗な目をしてるのね?」
萌木色をバックに、それより濃い目のグリーンの瞳が印象的だった。
モモは茶色だしね…
「ねぇ…あなたはどこの猫ちゃんなの?」
野良猫ではないだろう。
艶やかな毛並みと、穏やかな表情が日々の食に追われていない事を表している。
「迷子…では無いのよね?」
迷子だったら連れ帰った方が良いかと思ったけれど、触らせてくれないなら難しいだろう。
「じゃあ…あたし帰るからね?
気を付けてお家に帰るんだよ?」
「ミャア」
散々話し掛けても返事をしてくれなかったのに、最後の所で分かってるよと言わんばかりに可愛らしい鳴き声をあげた。
「あたし、また明日も来ると思うんだけど…
猫ちゃんも来る?」
来るなら煮干しても持ってこようかな?
でも、モモが食べるやつでは固いかもしれないけど…
結局返事はしてくれなかったけれど、猫ちゃんに手を振って、その日は原っぱを後にした。
