花色の月


途切れ途切れに強めの声が聞こえたけれど、しばらくしてあの人は帰ったんだろう。

静かになって直ぐ、この部屋の襖を開ける音がした。



「花乃……?」



ほんの少し間があって、戸惑ったような那月さんの声がする。

でも、直ぐに押し入れの襖も開けられて、ホッとしたような那月さんの顔が見えた。



「驚きました。かくれんぼですか?」



泣き腫らした目にも、先程の会話にも触れずに微笑む那月さんに救われる。

優しく手を貸してくれて、押し入れの外に出るとすっぽりと那月さんの腕の中に閉じ込められた。



「花乃、かくれんぼの時は押し入れに隠れる事が多かったでしょ?」



小さく頷くと、堪えきれないと言うように那月さんが肩を震わせた。



「ククッ……桜介も、同じだったんですよ」



ついに漏れた笑い声と共に教えられたのは、知らなかった桜ちゃんの姿。



「桜ちゃんも…?」


「えぇ、押し入れや天袋が彼の隠れ場所でした。まぁ、かくれんぼって言うより十夢と喧嘩した時の引きこもり場所ですけどね」


「那月さんとは……喧嘩しなかったの?」


「私と喧嘩する度に押し入れに隠ってたら、桜介は殆ど押し入れ暮らしでしたよ」




そんなに喧嘩してたの?

本気で喧嘩してるのは見たこと無いもんね。

楽しそうにじゃれてんのはよく有るけど。


那月さんの腕の中で、だいぶ落ち着いたあたしは、胸に溜まっていた言葉を吐き出した。




「あたし……ずっと嘘ついてたの……」