花色の月


頭を殴られたような気分だった。

なんとか道を教えると、その後ろ姿を眺めながら視界が滲むのが分かった。



お祝い……?

『ひなこ』と那月さんのお祝いって事?


お祝いの挨拶にって、つまり……結婚の……?   

じゃあ……あの時の約束は無いものになってしまったんだろうか……



あぁ……もうダメだ。
空元気で頑張れる所は、とっくに通り過ぎていた。

とっくに燃料切れ状態で、この分だともう一生補充は出来ないみたい。




那月さんに会いたくて

でも、他の女性(ひと)と一緒に居るのなんて見たくなくて……


グチャグチャになった思考の中で、ただそれでも那月さんが好きなんだと痛む胸が語っている。



……みっともなくすがってみようか?

でも、那月さんに背を向けられたら、あたしの脆弱な心は壊れてしまうかも知れなくて……

ほのかに香り続けるくちなしの香りが、余計にあたしを追い詰める。



目の前の仕事をこなして、お客さまに笑いかけているのは誰?

なんだか、自分が二つになってしまったみたい。


夜、休むようにと部屋に帰らされて、ますます自分の価値が無いように思えた。

このまま消えてしまっても、誰も困らないじゃないかなって……