昨日の夜、せっかく那月さんが来てくれたのに……
あたしは、ちゃんと話をする事も出来なかった。
明かりを消してから、しばらくして窓の外を覗くと、まだ先程の場所で微動だにしないで那月さんがこちらを見上げていた。
「ほんまに暗いなぁ、そんなんじゃ女将さんにもバレるで?」
「……バレてるかも……」
ごはんを食べなさいと言ったおばあ様の表情には、どこか哀れむような色があった気がする。
気のせいかも知れないけど
……もしかして……おばあ様は『ひなこ』について何か知ってるんじゃないかなって思ってしまったんだ。
「そう暗い顔してたら、お客さまにも心配かけるで?それはいかんやろ」
「うん……気を付けます」
背筋を伸ばしてまた箒で玄関を掃き出すと、ため息をついて明美ちゃんも自分の仕事に戻っていった。
「あの~ここらに如月窯ってありますか?」
不意に声を掛けてきたのは、ここらでは見かけない男の人だった。
……目の前に来るまで気が付かないなんて、これがお客さまだったら大変失礼だ。
慌ててお辞儀をすると、聞き返した。
「如月窯にご用ですか?」
「そうなんですよ。お嬢様のお祝いの事でね」
