花色の月


「花乃、体調管理も仕事のうちやで」


「……うん、分かってる。迷惑かけないようにするから」


「全然分かってへん。まぁた昼抜いたやろ?」



明美ちゃんには空元気だとバレていて、事ある事に叱ってくれる。

それに足を引っ張る訳にはいかないと、食べてる事は食べているんだけど。



「食べたよ?カロリーメ……」


「あほ!あんなん食事とは言わんやろ!あれはクッキー、おやつやおやつ」


「大丈夫、……あたし元気だよ?」


「嘘下手な癖にようつくな」



はい……って頭下げるしかないくらいまで、しっかり叱られる。

そんな明美ちゃんにも、まだ『あの事』については言えてない。

……だって、明美ちゃんに言ったらちゃんと聞いてこいって、呆れられちゃうと思うから。



いい加減に踏み出さないと、なんにも解決しないのにって分かっているのに、それでも同じ場所で足踏みばかり。

……那月さんが居ないだけで、こんなにも景色は色を無くすっていうのに……



「なぁ、まだ終わらんの?如月さんの仕事」


「……うん、大変みたい」



これも嘘。
明美ちゃんにバレないと良いんだけど……

実は今日、新しい手紙が来た。

懐に入れているそれを、そっと着物の上から押さえて、押さえきれないため息を溢す。