花色の月


でも……火を付けたりしたし……



「じゃあ、花乃が洗って下さい」



これも久しぶりだからドキドキする。

那月さんの艶のある黒髪を、お湯で流してから石鹸を泡立てる。

その間、那月さんの視線はあたしから離れなくて、恥ずかしいから後ろに回って髪を洗おうとした。



「花乃、そっちじゃないでしょう?」


「でも……」



前にだと……丸見えなんですけど……

行くのを渋りながら、那月さんの髪を丁寧に洗う。

手桶のお湯で、泡をきれいに洗い流すと、那月さんはあたしを引き寄せた。



「花乃」


片手であたしを捕まえながら、濡れた髪を後ろに流す。

少しシャープになった顎のラインや、そこをつたう雫がとてつもなく色っぽい。

……その色気を、少し分けてほしい……


ゆらゆらと揺らめく蝋燭の火で、頬に落ちる影が妖艶な微笑みを彩っている。



「そんなに見つめたら穴が開きますよ?」


「なんかずるい……」



自分がどんなに綺麗か分かって言ってるに違いない。



「こんな顔ですが、花乃が気に入ってくれてるみたいなので嬉しいですね」



あたし以外にも、気に入ってる人は沢山いるでしょうけどね。