花色の月


「流しますよ」



ギュッと目を瞑ると、ザアッと手桶でお湯が掛けられる。

すっかり髪をすすぎ終わると、今度は手拭いに石鹸を付けてあたしの体を洗っていく。



「……自分で出来るんだけど」


背を向けてるから、那月さんからあたしの表情は見えないと思うけど、恥ずかしさに頬が熱くなる。



「照れてるんですか?可愛いですね」



お風呂場に響く甘い声に、ますます恥ずかしくなってうつ向いた。



「て、照れてないもん……」


「フフッ、この可愛い耳は素直なんですけどね?真っ赤ですよ」



わざとでしょ?
ってくらい耳元で囁いて、ゆっくりとあたしの手を洗う。



「ちゃんと落とさないと駄目ですよ」



もうとっくに汚れなんて落ちてる手や指を、石鹸の泡で滑らせながら撫でていく。

その動きがやらしいなんて言ったら、もっといじめられちゃう……

どこが那月さんのスイッチなのか分からないけれど、それを押してしまったのは確かみたい。



「那月さんも洗わなきゃ……」


「私は花乃に会う前に入ってますから、浴びるくらいで十分です」



あたしの背中や首筋に移動した手は、手拭い越しにやわやわと肌を撫でていく。