花色の月


そんなこんなで、何とかおにぎりが形になる頃には、柱時計の針は深夜をさしていた。

この時計は、毎日巻かなきゃいけないんだって、忘れたら1日時間が分からない……?

だって、ここにある時計はこの柱時計だけなんだもん。



「明日も早いんでしょう?」


「……うん」


手に付いたごはん粒を食べながら、布団を敷く那月さんに返事をする。

お風呂入らないとなぁ……

なんか、あちこちがカピカピになってる気がする。



「那月さんも……一緒に入る?」


お風呂場に行くガラス張りの引き戸を開けながら、ちょっと勇気を出して聞いてみた。


「………」


「や、やなら良いの!」



黙って考えてる那月さんから、逃げるようにして服を脱ぐとお風呂に飛び込んだ。

なんか、あたしって馬鹿みたい。

思いっきり薄桃色の石鹸を泡立てて髪を洗っていると、不意に後ろから抱き締められた。



「あのですね……一緒に入ったら、寝かせてあげられないかも知れないと思って悩んだんです」


背中に当たるのは、剥き出しの那月さんの胸板で、久しぶりだからか心臓が痛いほど打っている。



「やじゃ……なかった?」


「反対ですよ。結局誘惑に負けてしまいました」



そう言って、ガジガシと髪を洗っていたあたしの手を退けると、優しく髪を洗ってくれる。

もう、寝なくてもいいやって思っちゃう。