「……ほしい…い?」
「あぁ、簡単に言うとごはんを天日で乾かした物ですね。昔の保存食と言いますか、携帯食だったみたいです」
……ふぅん?
あたしの頭の中に浮かんで来たのは、おひつの隅でカピカピになったごはん粒だった。
……美味しいの?
「お湯でふやかしたりして食べるんですよ」
そう言って火加減を見る那月さんは、少し痩せた気がする。
顎の線がよりシャープになった気が……ちゃんと食べてないのかな?
心配になって、那月さんの横顔を見詰めていると
…グゥ~
と、小さくだけど確かに聞こえた。
えっ?あたしじゃないよね?
思わず自分のお腹を押さえたけれど、そこまでお腹は空いてない。
隣を見ると、平然としている様に見える、那月さんの耳がほんのり赤くなっていた。
「那月さんでもお腹鳴るんだ」
「私だって人間ですからね?……いや実は昨日から食べてないんです……」
フフッ、なんか可愛い。
笑うあたしを恨めしそうな目で見て、やたらと火吹き竹を吹いている。
「那月さん、やっぱり食べて無かったんだ……」
「やっぱりって何ですか。まぁ、集中するとごはんを抜く事は少なくないですけど」
それは知っている。
前に、しばらく会えなかった時も久しぶりに会ったら痩せて……やつれて?いて凄く心配したんだから。
「……あたし、おにぎり覚える」
それで、おにぎりを差し入れにちょっとだけ来させてもらう。
仕事の邪魔にならないように、背中だけ見て帰るかも知れないけれど、それでも充電にはなるしね。
