花色の月


「ここは……」


「えぇ、この橋は花乃と二度目に会った場所ですね」



会ったって言うか……
川に落っこちたあたしを助けようと、急いで走って来る影を見た所って感じかな。


なんせ、そのままブクブク沈んでた訳だから……



「遠くから貴女を見られたら、それだけで良いと思っていた矢先、落ちるんですからねぇ」


「あれは………あれ?なんで落ちたんだっけ?」



落っこちた事と、 その後那月さんがお見舞いにくちなしの花を持ってきてくれた事しか覚えてない。

まぁ、その時は花の送り主は知花さまだと思ってたんだけど。



「川縁に咲く花を摘もうとして足を滑らせたんですよ」



どこか危なっかしいと思っていたらしい那月さんは、一目散に駆け付けてくれたそうだ。

恥ずかしいやら情けないやら……


丁度最後の花火が空に上がった瞬間、意を決したように那月さんが懐に手を入れた。

出てきた時に握られていたのは……簪?




「くちなし……」


綺麗な銀の簪に彫られた花は、見覚えのある好きな花。


「えぇ、私と花乃が出会った時の花です。
今日の浴衣に、よく映ると思いますよ」



なんで簪を渡すのに、そんなに勇気がいるんだろう?

そう思ってしまうくらい、那月さんは緊張していた。

私に差し出す簪に、月の光が集まって輝いている。