「花乃、行きましょう」
あたしの手を引いて歩き出した那月さんの背中には、お邪魔虫は退散しましょうって書いてある。
あたしも、那月さんと二人になりたかったしって、ここで言葉に出来る可愛いげがあったら良かったのに。
「花乃は、十分可愛いですよ?そんなに顔に書いてくれるんですから」
……そんな顔に出てるのかなぁ……
ちょっと後ろを振り返っただけで、あたしの表情を読んじゃうなんて、やっぱり那月さんは流石だね。
だって、辺りはもうだいぶ暗いんだよ?
手を繋いだまま二人が歩く田舎道は、人がだいぶ少なくなってきた。
ここまで来るのは地元の人くらいだからね。
あたしと那月さんが月花橋についた頃には、お腹に響く音と共に夜空には大輪の華が咲いていた。
隣に愛しい人がいるだけで、今までよりずっと鮮やかに見えるものなんだね。
手を繋いで、たまに溢れるのは賛美の声だけ。
ふと、隣を見ると甘い微笑みを浮かべた那月さんが、微動だにしないであたしを見ていた。
「……那月さん、花火見てないの?」
「花乃の瞳に映ってる花火の方が綺麗ですから」
「……ちっちゃいじゃん」
それに、そんな見えるもの?
「見えますよ」
そのまま目の中を覗き込むようにして屈んだ那月さんの唇が、あたしの唇に触れる寸前に確かに見えたの。
夜空に咲いている大輪の華より、とっても綺麗な瞳の中の花火が。
