花色の月


お腹が減ったらしい二人が、お好み焼きを買ってこっちに向かって歩いて来る。

那月さん、さっき食べた鮎の塩焼きとたこ焼きといか焼きはどこに行ったんですか?


あっちはあっちで話があったみたいだから、それは済んだのかな?



「そろそろ花火だぞぉ。行くか?」


桜ちゃんの隣に立って、話し掛ける姿は酔ってしまいそうに甘ったるい。

何があったか知らないけど、心配する事は無いんじゃない?



「十夢に見とれるなんて、後でお仕置きが必要ですね」



あら……お仕置きが増えちゃったみたいです……


人目なんて気にしない那月さんは、そのままあたしを抱き寄せておでこに軽く唇を寄せた。



「あの……痛いんですけど……」


「おや?痛い事なんてしてませんよ?」



……回りからの視線が痛いんです。


ゲッ……永野絵里が視界に入ってるのは幻覚であって欲しい……


残念ながら幻では無かった彼女も、知花さまと桜ちゃんの雰囲気を見ると、足早にその場を後にした。


ちょっと可哀想だったかも……
でも、胸焼けしそうに甘く、桜ちゃんに囁く姿を見て思い知っただろう。


自分がいくら誘惑しても落ちなかった人が、誰のものだったか。




「なぁ、そろそろ機嫌直してくれねぇかぁ?」



あら、まだ桜ちゃんのご機嫌は直って無かったんだね。