花色の月


あたしと那月さんに、後ろから声を掛けてきたのは、ちょっと存在を忘れていた知花さま。

ひとまずりんご飴をかじるのを諦めて、キチンとお辞儀をした。


「浴衣、本当にありがとうございます」


「いやぁ、似合ってるなぁ!なっちゃんも別嬪さんだ」



別嬪さん発言をした途端、那月さんの手が知花さまの頭に振り下ろされた。



「いでっ!……誉めたのになんで殴るんだぁ?」


「私なんかより、花乃のがよっぽど美しいじゃないですか。ちゃんと目が開いてないみたいなので、目覚まし代わりです」


「そりゃあそうだけどなぁ……俺が花乃ちゃん誉めちぎったら、それはそれで怒るんだろぉ?」


「それもそうですね」


楽しげなじゃれ合いはさておき、桜ちゃんはどこに居るんだろう?

なんでか浴衣姿でいやらしい位にフェロモンを振り撒いている、知花さまの後ろを探した。

……那月さんは、凛としてて甘やかな色気だけれど、なんだか知花さまは……胡散臭い?



「花乃、それって故意に口に出してんの?」


「桜ちゃん!……って、なにを?」


「花乃ののろけみたいな、十夢いじめみたいな言葉。全部口に出してたけど」


「花乃、そんな風に見ててくれたんですね。嬉しいです」



えっ……?えぇぇーっ!

ど、どうしよう……穴があったら入りたい!

辺りを見回しても、穴なんてある訳がないし、いっそ自分で掘ろうかと考えていると、うにっとほっぺを掴まれた。