花色の月


「人混みは苦にならないんですけど、花乃をさらって誰にも見られない所にしまってしまいたいです」


「……爽やかな笑顔で言わないで下さい」


「仕方ないじゃないですか。花乃が魅力的過ぎるのが悪いんです」


魅力的過ぎるのは那月さんでしょ?

藍地に、白い花が映える浴衣を、堂々と着こなしている那月さんは、ため息が出るくらい……


「綺麗……」


「おや?私が言う前に言ってしまうなんて、後でお仕置きが必要ですね」


えぇっ!?お仕置きされるような事言ってないよ?

目で文句を言うあたしの頬に、そっと手を添えて囁いた。



「世界広しと言えど、花乃ほど美しくて愛らしい生き物はいないでしょうね」


なんて、こっぱずかしい事を……
しかも生き物って……

甘い甘い微笑みに、あたしまでくらくらしてきちゃった。

免疫は、かなり付いてたつもりだったんだけど……



「山神様にさらわれないように、ちゃんと近くに居てくださいね?」


そんだけしっかり手を握ってたら、大丈夫だと思いますけどねぇ……



「花乃を見初めたとしたら、目が高いと誉めてあげますが、渡しはしませんよ」



神様に向かってなんて上から目線なんでしょう……

でも、つき始めた提灯の明かりの下で、嬉しそうに微笑む姿を見ると、なんでも許してしまいたくなる。

……山神様が罰を当てませんように。
今日は、しっかりお詣りしなくちゃ。