花色の月


「ふぅ……あの子はねぇ、忙しいって言ってるのに、夕方からは休みにしてくれって堂々と言ってきましたよ」


……瑞穂ちゃんらしいかも。

自分の目的を果たすためなら、回りの人に迷惑を掛ける事にも躊躇いがない。

だから怖いんだよね……

あたしと付き合ってるって言っても、あの子を阻むには弱すぎるみたい。



「あなたもちゃんと如月さんを捕まえておきなさいな。あの子、お祭りに誘ったそうよ?」


「ぇ……?」


「瞬時に断られたそうですけど、油断はなりませんよ」



おばあ様、そんなにあたしを怯えさせてどうするおつもりでしょう……

急に重くなった胸の内を、那月さんに悟られるのも嫌で、忘れようと頭を振った。



「まぁ、とにもかくにも楽しんでいらっしゃいな」


「……はい」


あたしのテンションが下がった理由は、おばあ様の言葉なんだけど……


一瞬、お祭り前のキラキラした世界が、灰色にくすんで見えた。


那月さんに……会いたいな……

今日の夕方には会えるって言うのに、どうしても今会いたくなってしまった。

勿論、今すぐって言うのは無理。

夕方からは抜けさせて貰うんだから、今のうちに出来る事は済ませてしまわなければね。



先程の荷物はおばあ様に預けていたから、空いた手で打ち水用の桶と柄杓を持った。

髪を散らすように山から吹き降りてくる風は、真夏の日差しの下でも涼しさを失わない。



「……花乃」