花色の月


後ろから抱き締めてくれながら、那月さんは甘い声で囁いた。



「……うん……ちょっと」


「言いたくなったらで良いですよ。でも私に一番に言って下さいね?」



ちょっと笑いながら軽く言ってくれるから、その那月さんの気遣いに甘えてしまう事にした。

そんな直ぐに式がある訳じゃない。

少し一人で考えてみよう。



那月さんの大きな手を撫でながら、何となく胸が苦しさが軽くなった気がした。

せっかく来てくれたんだけど、やっぱり今日は那月さんと二人で過ごしたかった、なんて我儘を思う。

思うだけなら、誰にも聞こえないから良いよね?



「そんな可愛い事を言うと、浴衣を見る前に花乃を食べちゃいますよ?」


「ぇ……?」


「読んでませんよ。花乃の呟きを拾っただけです。言ったでしょう?私は地獄耳なんです」



口に出してた?
それってすごく……恥ずかしいんですけど……

那月さんの顔が見れなくて、するりと腕の中から抜け出して浴衣を取りに行った。


後ろから着いてくる那月さんは、お見通しだと言わんばかりに、クスクスと笑っている。




「花乃には分かるんですが、私にも花柄を仕立てるとは……あの人達は何を考えているんでしょうね?」


「那月さんにも、くちなしは似合うと思うよ?」



何から何まで用意してくれた桜ちゃんと知花さまが、どんな浴衣を着てくるのか楽しみだ。

きっと、桜ちゃんは可愛くて、知花さまはいやらしいに違いない。