花色の月


「もちろんっ!でも……大丈夫?」


たぶん、那月さんの事情をそれなりに知っている克彦お兄ちゃんの言葉は、知らない人がいる中に行く事への気遣いだと思う。


「花乃が居てくれれば、あの夢の国っていう遊園地にも行けますよ」


……あそこの人混みは、あたしが嫌です。

そこで、克彦お兄ちゃんは思いきった風に、もう一度あたしの手を握って言った。



「そこで、花乃ちゃんに歌を歌って欲しい」


一瞬勢いに押されて頷きそうになって、でも……頷く事は出来なかった。



「……考えさせて下さい」


「うん、返事は直ぐじゃなくていいよ。とにかく二人が出席を承諾してくれたって事で今回は大収穫ー!」


おどけて笑って見せる姿は、一瞬見せたあの瞳の持ち主とは思えない位底抜けに明るくて、さっきの鋭くどこかほの暗い瞳は、見間違いだったんだろうか……

那月さんに、また頭を叩かれて手を離したけれど、真っ直ぐ視線はあたしを見ていた。




「じゃあ、お邪魔してごめんね~!」


「二度と来ないで下さい」


「如月のいけずー!じゃあ、花乃ちゃん色好い返事を待ってるよ」


「ぁ……はい」


取り合えず頭を下げると、元気よく手を振って歩きだした背中を眺めていた。



「花乃、何が気掛かりでしたか?」