「えぇっ!?そんな覚悟出来っこないでょーよ!」
「大人しく埋められて下さい」
那月さんは怖いし、お兄ちゃんはうるさいし…
じゃれ合う二人を放置して、浴衣を広げてみる事にした。
那月さんのと、あたしのとでは、深い藍の色は同じだけれど、くちなしの花の数や大きさは違うみたい。
帯や下駄まで揃えてくれたのに、桜ちゃんからの手紙が無い事が寂しいなんて、那月さんには言えないよね。
自分の方の浴衣を持ち上げた時、袂の辺りでカサリと音がした。
慌てて取り出すと、期待通り桜ちゃんの字。
賑やかな二人を他所に、そっと開いた桜色の便箋には、お父さんの再婚相手の子どもが知り合いだった事を黙っててごめんねと書いてあった。
でも、あたしが知る前にお兄ちゃんに会っていた事は知らなかったみたいで驚いていた。
『……まぁ、そんなこんなで義理の兄貴が出来た訳だけど、僕的には花乃の兄貴は僕だけだと思ってるし、そんなポッと出の克彦に兄貴の座を譲る気なんて、これっぽっちも無いからね。
個展の前に夏祭りだね。
花乃の浴衣姿楽しみにしてる。
癪だけど、那月と仲良くね。 桜介』
フフッ、癪なんだ。
いつの間にか、桜ちゃんとの温度差が無くなっていて、心がただ暖かくなった。
桜ちゃんは、あたしの事を妹としか見て居なかったけれど、あたしにとっては初恋の人だった。
でも、今は桜ちゃんが従兄で、お兄ちゃんで良かったなって思えるよ。
「……那月さんのお陰だね」
