花色の月


「あっ、お茶の前に水くれるー?」


「自分で汲んできなさい」


「へいへい、あっ……そう言えばセンブリって何?」


「薬草ですよ。お馬鹿な頭に効くんです」



嘘ですけど。

向こうの方で、花乃が呆れたようにこちらを見ている。

ところで、この無粋な生き物はなんで来たんでしょう?

あと、荷物の中身も見るの忘れてましたね。



「なんで……お、お兄ちゃんはここに来たの?」


お兄ちゃんと強制的に呼ばされている花乃は、水の入った湯呑みを克彦に渡している。


「そうですよ。女将さんからしたら余り顔を会わせたくない人だと思いますよ」


「それは分かってるってー。名乗れないから不審者扱いされちゃったんじゃん」


なるほど、名乗れない癖にこんな所まで入り込んで、挙動不審にうろうろしていたから、光に捕まったんですね。

そのまま交番にでも突き出してくれれば良かったんですが。



「で、理由は何なんですか?」


「え~、そりゃあ花乃ちゃんに会いたくて?だって花乃ちゃんあんまりメールの返信してくれないし、お兄ちゃん寂しくなっちゃった」


えへって笑って見せるこの大馬鹿野郎を、どうやって始末してやりましょう。