花色の月


「ふぃ~。いい湯だった~」


自称花乃の兄である克彦は、光に捕まったり地面に転がされたりしてだいぶ薄汚れていた。

何故自称かって言うと、私は認めていないならです。
花乃の兄は、桜介一人で十分です。


しかも、この無粋な生き物は図々しくも風呂に入れろとのたまい、優しい花乃に必死に頼まれた私は、渋々入浴を許可しました。



「そのまま溺死してくれて良かったんですが」


「だ、ダメだよ那月さん!……そんなお風呂、もう入れないよ?」


髪を乾かし終わった花乃は、花乃なりに二人の時間を壊された事について、怒っているようです。

私の言葉にはなんのダメージも受けない克彦ですが、花乃の言葉には涙目になっています。



「二人して酷いなぁ……
てか、ここって電気来てるんだ?」



克彦の目線は、この家の中で違和感のあるドライヤーに向いています。



「裏の小川に水車があるんです」


「えっ?水車で発電!?」


「嘘に決まってるじゃないですか」


「………」



電気は使えるんですが、普段はあまり使っていません。

ですが、花乃がよく泊まるようになって、ドライヤーの必要性を感じた私は、数少ないコンセントの脇に花乃用の物入れを作ってそこにドライヤーも入れておきました。


花乃の髪が痛むのは頂けませんし、髪を乾かさずに寝て風邪を引いてしまったら困りますからね。



「あっ、飲み物なにか飲みますか?」


「ありがとー!貰おっかな」


「センブリを差し上げて下さい」


「それはちょっと……」


苦笑した花乃は、ごく普通の煎茶を淹れているようです。

残念ですね。