花色の月


「あたし…引きこもりなんです」


「はぁ?」


「…レンズの裏に引きこもってる、暗い女なんです。
…だから……」



放っといて下さい。

握り締めた拳は膝の上で震えるけれど、今さら隠したって遅い気がして、そのままにしておいた。



「ふ~ん、外しても話せるじゃねぇか?」


「…それは」



あなただから…
顔色を伺って話す気も無いから…




「こんなのあったら、キスの邪魔だろぉ?」


「…する予定ないもん……」


「なに悲しい事言ってんだよ。
そーんな可愛いんだから引く手あまただろぉ?」



何が言いたいの?
あたしの傷を、この人はそんなに抉りたいんだろうか…

上手く言葉が出てこなくて睨み付ける事しか出来ない。




「自分がかなり可愛いって気付いてねぇのか?」


「…はぁ……?」


「桜介とそっくりなのに、自分が美人って気が付いてねぇのか?
それとも桜介を不細工だと思ってる?」



本当に何が言いたいのか分からない。



「桜ちゃんは綺麗です」



でも、似ていてもあたしは美人なんかじゃ有りません。
桜ちゃんを暗くして不細工にしたら、自分の顔だろうなぁっていつも思うもの。