花色の月


薄桃色の石鹸を泡立てて、花乃の髪を洗っていく。

美肌成分や、美髪成分が豊富に含まれるらしい月守温泉と同じお湯なので、所謂コンディショナーやトリートメントなんかしなくても髪が艶々になるんですよね。


髪を洗われる時の花乃の表情は……猫が喉を撫でられている時の物と言えばいいんでしょうか。

うっとりとこちらに体を預けてくれるので、洗ってる方も幸せな気分になれるんですよね。



「宅急便でーす!!」


おや?おかしいですね。
外から無粋な声がします。


「ひ、光さん!?」


急に体を固くした花乃は、すっかりリラックスモードから脱してしまったようです。

あの野郎……万死に値しますね。



「花乃はゆっくり浸かってて下さい。一発殴ってきますから」



軽く体を拭いて、バスタオルを腰に巻いた状態で縁側に回った。



「うーわ!昼間っから何してんねん」


「あぁっ!?明美は見ちゃダメ!」


クルッと後ろを向かされた明美さんは、面白そうに笑っている。

……光に対する怒りのせいで、明美さんが居るのに気が付けませんでしたね。



「あーえっとですね。お楽しみの所悪いんですけど、荷物来てたんで持って来たんっすよ」


「ありがとうございます。お帰りください」


「えぇ~……」



何を期待していたのか知りませんけど、このまま居させて私の楽しみの邪魔をさせる訳にはいきませんからね。