花色の月


その時、甘い空気を打ち破るように鳴り響いたのは、普段は黙っている事の多い黒電話でした。

……最近、少々出番が多いですけどね。



「花乃、電話に出てきますから、少し待っててくれますか?」


「うん、早く……ね?」


なんでそんな色っぽく言うんですか!

まだお日様も高いんですよ!!


心の中で叫びながら、精一杯平静を装って受話器を取った。



「はい、如月です」


『あ~、もしもし?俺だけど』


「……分かりやすい詐欺ですね」


『ぅおいっ!詐欺じゃねーよ!
って、そんな事は良いんだけどなぁ』



このタイミングで電話を掛けてきたのは、まさかの十夢で、助かったのか邪魔されたのか考えてしまう私は、既に理性が崩壊しているようです。



『今度、俺ん所で使うランチプレートを作って貰いてぇんだ』


「十夢、花乃が酔ったのを見たことありますか?」



十夢の話は、完全に無視をして、今最大の疑問について聞いてみた。



『酔ったっつーか……一緒に花見して飲んだ事はあるぞぉ?』



な、なんて言いました!?

こんな可愛らしく色っぽい花乃を、十夢の馬鹿野郎も見たって言うんですか!?