花色の月


「…すみません……」



「ん?
あぁ…まぁビックリしたな、あれは」



自分が頬に触れていた事に気が付いたのか、苦笑いをしながら手を下ろした。



「…痛いですか?」



「いや?もう痛みはしねぇよ。
それより…花乃ちゃんの手はどうなんだ?」


少し聞きにくそうに、ゆるりとあたしの手に視線を落とした。



「だいぶ痛むことも無くなりました。
ご心配お掛けして申し訳ありません」



「…その堅苦しいの止めろって」



一応取られない位置に座っていた筈なのに、伸ばされた手は難なく眼鏡を奪っていった。



「ぁ…」



「おどおどしてても、素の方が可愛いぞ?」



…別に、あなたに可愛いなんて思われなくていんだけど…



「なぁ、なんでこんなの付けてるか教えてくれるか?
桜介には言わねぇから」



「………何となく…です」




「俺ってなぁ、見かけ通り握力強いんだよなぁ?
リンゴ潰せるから、眼鏡なんて…」



一瞬で粉々だぞ?

悪い微笑みが似合いますね。
と、心の中だけで言うとため息がこぼれ落ちた。