花色の月


さて、目の前の嬉々としてお粥を食べさせようとする那月さんを、どうしたらいいんでしょう?



「……自分で食べれるんだけど…」


「私の楽しみを奪わないで下さい。はい、あーん」


あーん何て言う那月さんが、余りにも楽しそうにしてるから、つい口を開けてしまった。



「ラブラブで何よりやな」


「ングッ……」


喉に詰まりそうになったお粥を、涙目になって飲み込むと、そろりと声の主を見る。

いつの間に来ていたのか、薬と水の入ったグラスを持って、明美ちゃんがニヤニヤしていた。



「わざわざ見せ付けるとか、人が悪いなぁ?」


「花乃の可愛い顔が見れて良かったじゃないですか」


「光やったら泣くかも分からんで?」


「それはちょっと期待しました」



要するに……誰か来たことが分かってて、あんな事をさせたと。

那月さんの手から、お椀とおさじを取り上げて、パクパクと自分で食べ始めた。


ふんだ!二人してあたしをオモチャにしてっ!



「あぁ…怒っちゃったじゃないですか……」


「でも、怒ってる姿も可愛いんやろ?」


「バレましたか?」



二人を頑なに無視して、せっせとお粥を口に運ぶとあたしにしてはかなりのペースで食べ終わってしまった。



「まっ、そんだけ食べれんなら大丈夫やな」


満足そうにしている明美ちゃんから薬を受け取って、那月さんの方を見ないようにして飲み込んだ。

……苦い……



「じゃあ、二人してゆっくり寝とき?」


「ありがとう。……ごめんね?仕事増やしちゃって」


「久しぶりやもんな。福田屋の栗饅頭で許したる!」



笑顔で出ていく明美ちゃんの姿を見送ると、ポツンと那月さんが呟いた。