花色の月


……たぶん逆ナンされて、大変な事になるのは那月さんの方だと思う。

あたしはガードするような押しの強さも、みんなが納得するような美貌も持ち合わせていないもの。


話が脱線してしまったなぁと思いながらも、段々強くなる頭の痛さに思わず顔をしかめてしまった。



「花乃…?」



直ぐに伸びてきた大きな手は、あたしの額や首筋に触れる。



「熱が出てきましたね?さっきまでは無かったのに…」


「那月さん……帰んないで…」



急に立ち上がった那月さんの浴衣の裾を、思わず掴んでいた。

だって、まだ大切な事を言えてないのに…



「大丈夫ですよ。薬を貰ってくるだけですから」


そう柔らかく微笑まれると、自分の子どもっぽい行動が恥ずかしくなった。


たぶん、今のあたしは真っ赤だと思う。

恥ずかしさと熱とが入り交じって、どうしようもなくなったあたしは、逃げるように布団に潜り込んだ。



「すぐ戻りますから」


那月さんの声が聞こえて、戸が開いて閉まる音がした。

ちょっとヤバいかも……

上がってきた事が、体温計を使わなくても分かるくらいにクラクラしてきた。