花色の月


「あのなぁ……お前が思ってる以上に、俺や桜介は色々やってんだぞ?
それに、話して嫌われたくないって思ってんのは、お前だけじゃないよ。」



…どういう事?

色々ってなんの事?

でも、聞いてしまいたいような気持ちと、聞きたくない気持ちが心の中で喧嘩している。



「溜め込むなよ。泣きたい時は桜介貸してやるからなぁ?」



パチン

音がしてから気が付いた。

あたしの右手は、アザがある方の知花さまの頬を叩いていた。



「…ぁ……」



「よし、ひっぱたく元気があったら飯も食えるよな?
武さんに頼んどいてやるから、部屋ででも大人しく食べときな」



初めて人を叩いてしまった感触に凍りつくあたしの頭に、何事もなかったかのように手を置いた。



「…ご、ごめんな…さぃ……」



「まぁ、痛くは無かったしなぁ。
俺が挑発したんだ、気にすんなよぉ?」



ひらひら手を振りながら出ていった知花さまは、本当に武さんに頼んだみたいで、直ぐにお膳を持った武さんがやってきた。




食べたくないのに…

どうせ胸なんておっきくなったって仕方ないのに…

だって、桜ちゃんが好きなのは、胸板の厚いあの人何だから。



あぁ…考えれば考えるほど落ち込んできた……




「…ねぇ、モモはあの人が好きなの?」



「フニャア」



「……やぁね、みんな取られちゃう………」



言葉に出すと、また涙がこぼれ落ちた。

居場所は作るものだと前に誰かに言われたけれど…

無理だよ、あたしには作る事なんて出来やしない。