花色の月


いとおしそうに楓ちゃんの背中を撫でていた那月さんが、あたしの方を向いて口を開いた。


「花乃……私を…………」



でも、それ以上言葉は続けられずに、苦しそうに表情が歪んだ。

あたしが、あの時取った行動が、こんなにも那月さんを苦しめているんだ。



「那月さん……ごめんなさい、ごめんなさい……」



不安げに揺れる瞳を、隠そうともしない那月さんの、そのサラサラな黒髪ごと抱き締めた。



「あたし……幻滅なんてしてない……」


「捨てるなら………今ですよ」



そっと、首筋に抱き付いたあたしを離して、笑みを作ってみせた。

何かを諦めて、でもどこか期待したような、そんな顔。



「那月さんは……あたしと、会わなくてもいいの?」



いいえって、言って欲しくて、そんな顔をして欲しい訳じゃ無いのに、捨てないでって言えないのは何でだろう。




「花乃が、それを望むなら」


「………望まない」



那月さんは、人一倍不安定な面を持っていて、揺れない為にいつもどこか斜に構えている。


それでも、あたしの事はいつも真っ直ぐに見てくれた。

今も、揺れる瞳であたしを見てくれている。



いつも与えて貰うばっかりで、どこかそれに慣れていたんだ。