花色の月


「明美、それくらいになさいな。花乃も無事だった事ですし」



ホッとした顔で、明美さんを宥める女将の前に膝をついた。



「申し訳ありませんでした」




手をついて頭を深く下げた。

こんな事で許されるとは思っていない。

今後会うなと言われても仕方ない事を、私はしてしまった。



それでも……

花乃を失う事は出来ません。



「な、那月さん、立ってよぉ!
那月さんは悪くないの!」


私の隣にしゃがみながら、花乃が必死に女将さんに言っている。



「夜の雨を甘くみたのでしょう?
那月さんも顔を上げて、痴話喧嘩を叱りはしませんよ」



「…え?」



「ほら、二人ともサッサとお湯に浸かってらっしゃいな。あらあら、髪にまで泥がついちゃって」



呆れたように笑う女将さんを、ポカンと見上げる私は、かなり間抜けな顔をしていると思う。

髪は、水溜まりにの泥水を含んで頬に張り付いた。



このまま、私は花乃と居ても良いのですか?



「武達も今頃浸かってますよ。那月さんは二人に謝ってらっしゃい、それでちゃんと温まるんですよ?花乃は温まってから二人にお礼を言いなさいね?」


まだ状況が飲み込めない私を引っ張って立たせたのは意外に明美さんで、そのまま裏口から温泉の暖簾をくぐらされた。



「着替えここ置いとくなぁ?ちゃんと温まったら頬冷やしたる」



笑いながら私の背中を押すと、次は花乃を温めんと、と呟きながら明美さんは脱衣場を出ていった。


えっと……お風呂に入ればいいんでしょうか?