「花乃っ!」
中に入った途端、色濃くなった花乃の気配に、胸を撫で下ろして駆け寄った。
ビックリしたように目を見開く花乃を、腕の中に抱き締めて……やっと息が出来た気がした。
「良かった……」
「…那月さん……」
「怪我は!何処か痛く無いですか!?」
「大丈夫だよ…?
ちょっと寒いけど……楓ちゃんのお陰で雨宿り出来たし、明るくなったら楓ちゃんに案内して貰って帰ろっかなって思ってたの」
取り乱していた私達の状況を知らない花乃は、ちょっと罰が悪そうに笑って見せた。
「あれ……?那月さん、泣いてるの?」
「すみません、私が……ちゃんと送っていれば……」
「あたしが、勝手に追い掛けて迷っただけだよ?那月さんは悪くないよ?」
いえ、花乃を置き去りにして……
でも、何処かで追い掛けてきて欲しかったのは、私です。
「取り合えず帰りましょう。皆さん心配してます」
「あら………怒られるよねぇ……」
「いえ、怒られるのは私だけだと思いますよ」
花乃の懐で、呑気にゴロゴロ喉を鳴らす楓には、帰ったらご褒美をあげなければいけませんね。
雨に濡れてバレないと思った涙を乱暴に拭って、そっと花乃の手を引くと。
握り返してくれる事に安堵して、少し雨足が弱まった森の中を月守旅館に向かった。
「花乃ーっ!」
姿が見えた途端駆け寄ってきた明美さんは、花乃を抱き締めると向き直って次の瞬間私の頬を打った。
「こんの、ど阿呆っ!!」
