花色の月


「武さんっ!花乃は……」



私を見た武さんが、悲しそうに首を横に振った。



「嬢ちゃん……やっぱり克也さんと…」


「いえ、克也さんとは無事に和解しています。……悪いのは、私です」



「そんな事言ってる暇があんならサッサと探せ!!」


いつもは私に向かって体育会系の敬語を使う光が、胸ぐらを掴み上げて怒鳴った。



「誰のせいとか何とか話すのは、若女将が見付かってからだろーがっ!」



投げ捨てるように手が離された所で、一瞬二人に頭を下げて森に駆け込んだ。

光や武さんは、あんまり深くまでは行ってない筈だ。

懐中電灯の僅かな灯りだけでは、下手すると二次災害を引き起こし兼ねない。



「花乃ーっ!!」



お願いです。返事をしてください……


あの場所から迷うとしたら?

花乃を置いてけぼりにした場所から、如月窯に向けて歩く。

どこで道を外れた?


………花乃が歩いて出来たであろう跡も、この大雨が流してしまっている。


嫌な予感ばかりして動悸が激しい胸を無理矢理押さえ込んで、花乃の気を辿ろうと目を瞑った。


一番集中しなければいけない状況なのに、雑念が多すぎて自然の声を聴けない。

こんな時に聴けなかったら、なんの意味も無いじゃないですか……



回りを見回して、大きなケヤキの木に近付くと、雨に濡れた太い幹に両手を当てた。

どうか……教えてください。




……………………
…………



花乃は、ここまでも辿り着いてない。

道を外れたのは、もっと前だ。



ケヤキの木にお礼を言って、また道を下った。