花色の月


……駄目!

それだけは、耐えられない!



遅ればせながら走り出したあたしを、強くなってきた雨が叩いていく。

拒否されたなら、許して貰えるまで粘ればいい。


疲れている那月さんを、更に困らせた上に、幻滅なんてしていないと伝える事すら出来なかった。


雨の中那月さんの家に行くのは初めてで、スコールの様に激しくなった雨は、足元を川のように流れていく。



何度よろめいて、何度転んだのか分からなくなった頃、やっと自分が道に迷った事に気が付いた。



ザアァァ……


嘘…………ここ…どこ?


川の様に流れる雨は、道を下ってくるのだろうと勝手に思い込んで、足元だけ見ながら歩いていたあたしは、自分がどこに居るのかも分からなくなっていた。


振り返っても前を向いても、変わらぬ木立が雨に濡れているだけ。


これだけ雨が降っていると、暗闇に目が慣れても直ぐ近くしか見る事が出来ない。


キョロキョロと回りを見ているうちに、自分が歩いてきた方角も分からなくなってしまった。



…水が、流れる落ちる方に歩けば……

元の場所に戻れるかもしれない……



夏でも、全身ずぶ濡れになればけっこう寒い。

町から帰ってきてバスを降りた途端、心地よいと思った山の風が、体を芯まで冷やしていく。

濡れて、脚にまつわりつくスカートが、更にあたしの自由を奪った。