花色の月


「花乃……」


「ごめんね……那月さんが辛くないようにして?あたし敬語でも、そうじゃなくても那月さんが大好きだから」



ちょっと瞳を揺らす那月さんを見て、改めて沢山困らせたんだと悲しくなった。



「花乃……あなたは、私の理性をぶっ飛ばそうとでもしてるんですか?」


「はい?」



何故か、うっすら那月さんの顔が赤くなっている。

那月さんが赤面するなんて、そんな貴重なものは見逃せないと、思わず凝視してしまった。



「それにしても……不思議ですね」



「なにが?」



「私がどんなに自分の手で耳を塞いだ所で、別な方の感覚が研ぎ澄まされてしまって、少しも静かにならないんです。
でも、花乃の手は雑音を、聞き取れないくらいに小さくしてくれます」



「本当に?」



「えぇ、嘘なんてつく必要がないでしょう?」



「それなら、辛いときはいつでもあたしが耳を塞いであげる。あたしの手で少しでも那月さんが楽になるなら……嬉しいな」



敬語でも、そうじゃなくても、那月さんは那月さんだ。

あたしの愛してやまない人。

この、雑音が多い現代社会で、苦しいほどに聞こえてしまう那月さんが、少しでも心の平安を得られるなら、あたしはなんだってする。

我が儘言って、ごめんね?