「あっ、言ったことありませんでしたか?
私、異常に耳が良いんです。地獄耳とは私の為の言葉じゃないかってくらい聞こえます。あそこの男子高校生の会話が分かりますからね」
那月さんが指差したのは、同じ車両ではあるけれどあたし達と反対の端にいる男の子二人だった。
人を指差しちゃいけないんだよ?
って言うか……嘘でしょ?
だって、見かけからして比較的大人しい部類に入りそうな二人は、頭を付き合わせボソボソ何かを話している。
どんなにあたしが耳を澄ませても、会話の内容なんて欠片も分からない。
しかも、あたし達とその男の子達の間には、賑やかな女の子達がいてその子達の声が騒がしいから、余計に聞き取るのは難しい。
因みに、この車両に乗ってるのは今言った人達だけ。
「それじゃあ……余計に辛いんだね…?」
思わず両手で那月さんの耳を塞いでいた。
だって……それに混ざって心の声まで聞こえちゃったりするんでしょ?
あたしの手なんてなんの役にも立たないと思うけど、気持ちだけは伝わればいいと思った。
しかも、こんな所でややこしい事を聞いたりして……余計に頭痛くなっちゃったかな?
