花色の月


帰りの電車で、那月さんと並んで座りながら、窓に映る自分達を眺めていた。

丁度人があまり居ない時間のようで、ガラガラの車内は少し肌寒い。

冷房が効きすぎかな……



「寒いですか?」


「うん…ちょっと」



那月さんに引き寄せられて、コツンと頭が鎖骨に当たった。



「良かったですね」


「…うん。でもビックリしちゃった……」


「私も驚きました。まさかあいつが花乃の義兄だなんて、思いもしませんでしたからね」



うん、世の中って狭いね。


世界を見に行った桜ちゃんと知花さまには笑われてしまうかも知れないけど、あたしの世界は月守旅館の回りだけ。

それでいいと思っている。


今日、心穏やかにお父さんの家族と接する事が出来たのも、隣に那月さんが居てくれたからだ。



「…那月さん、ありがとう」


人混みの中、あたしを守るようにして歩いてくれた那月さん。

本当は精神的に相当辛かった筈なのに、嫌な顔一つしないであたしを気遣ってくれた。



「花乃を貰います宣言を出来たので、私にとっても有意義でしたよ」